最大の悩み!転職における「サンクコスト」を考える

今や転職は当たり前の世の中になり、転職エージェントのCMをテレビで見ない日はないほど、市場としては活性化しています。

ただ、転職を考えたことがあってもなかなか一歩を踏み出せない人も多いはず。その最大の理由が「サンクコスト」です。耳慣れない人も多いかもしれませんが今回はそんな転職におけるサンクコストについて考えてみます。


サンクコストとは?

そもそも「サンクコスト」とは、「埋没費用(まいぼつひよう)」とも呼ばれ、本来は「事業や行為に投下した資金・労力のうち、事業や行為の撤退・縮小をしても戻って来ない資金や労力」を指します。

そこから転じて、転職におけるサンクコストは、「複数年の間ある企業に在籍していたことにより得た知識、ノウハウ、役職、人脈・努力などが転職でゼロクリアとなってしまう」ことによる機会損失やリスクということになりますね。転職を考えたことがある皆さんにとってもここが最大の悩みどころになります。

なぜサンクコストに悩むのか?

転職の動機を考える

まず、サンクコストの前に、「なぜ転職したいのか?」について、とある調査の上位ランキングを見ていきます。まあ、大体どの調査もこの手の理由が太宗を占めることになりますね。

・年収・待遇(評価を含む)が悪い
・業務内容(職種を含む)が気に入らない
・今の会社に将来の展望が持てない
・職場環境・労働環境(人間関係を含む)が悪い
・自身のキャリアアップ(能力を試したいなど) 

今後発生しうる前提条件

一方で、転職してもしなくても今後発生もしくは継続するであろう前提条件について考えます。特殊なケースや基礎的消費(最低限の衣食住)はさておき、あくまでも庶民が当たり前に経験する一般的な例として捉えてください。

・不動産(家やマンション)や自動車のローンを抱える 
・子供にお金がかかる(学費など)
・親の介護にお金がかかる
・趣味や旅行、ぜいたく品を一定の割合で消費する

転職の有無によらず発生する前提条件は、実は最終的に金銭面につながるものがほとんどになりますね。かつ、大事なことですが、これらが発生する(これらで苦労する)のは主に「30代後半~40代」になります。

転職サンクコストを考える

最後に、サンクコストを考えます。いわゆる、「会社を辞めて『もったいない』と思う要素」です。

・現在の職業(会社)に就職するにあたり相当な勉強(資格取得を含む)をしてきた
・今の会社で多くの人脈形成をしてきた
・今の会社で一定の評価を受けている、もしくはその結果ある程度の立場になった
・ランクアップに伴って一定の収入を得られる状況になった
・今の会社で活用できる知識・スキルを長年かけて身につけてきた
(今の会社でしか通用しないものを含む)

以上からもご理解いただけるとおり、いかに動機が明確で思いが強かったとしても、我々一般庶民には様々な今後発生する「前提条件」があり、それが金銭的要素であるがゆえに、サンクコストを天秤にかけたときに、「本当に大丈夫だろうか?」と思うわけです。

「現実」を知った上で判断する

では、どうすればいいのか?と思いますよね。そらそうです。

実は、「学問的な観点」かつ「転職というジャンルに縛られない」一般論で言うと、「サンクコストは気にしてはダメ」が正解です。でも、ここからは、皆さんに「現実」を知ってもらったうえで、正解は何か考えてもらえればと思います。

収入(特に生涯年収)の観点

まず、一番大事な収入の観点でいうと、以下のような現実や割合を知っておく必要があります。

  • 転職後に年収が上がるのは全体の4割前後(60歳以上を除く)
  • ただし、退職金や年金には企業差があるため、「生涯年収」が増える割合は不明(大企業→中堅・中小企業への転職の場合は総じて退職金や年金は減少)
  • また、年収が上がる場合「成果主義の職種(営業等)」への転職割合が高い
  • その場合、成果が出ない場合(成果が出にくい年齢を含む)は、「年収」および「生涯年収」の確約ができない
  • 一定の役職や年齢以上になれば、現状の収入を上回る転職先を見つけるのは相当困難

個人の市場価値の観点

次に、市場価値の話をします。私も一定数の転職者を送り出してきましたが、そこから定性的に発見している法則を記載します。

  • 転職後に年収が上がる人は「前職でも優秀な社員」がほとんど
  • ただし、前職で優秀な社員が全て、市場価値があるわけではない(今が「たまたま」の可能性あり)
  • 一方、今の会社で能力の低い社員は、不思議とほぼ全員「市場価値が低い」
  • 昨今では英語がそこそこできないと市場価値は低い
  • 「今の会社でしか通用しないスキル」を磨いてきた社員の市場価値はほぼゼロ

サンクコストを気にしないでいい人

上記をベースに、誤解を恐れず、大胆にこのサンクコストを気にせず転職してもいい人の条件を記載すると以下の通りです。多分、多くのホームページでおすすめされている内容とはだいぶ違うとおもいますが、現実はこういうことだ。と理解を深めてもらえると幸いです。

  • 30代前半までがリミット(それ以降は条件が悪い)
  • 「より大きい企業」への転職が基本(退職金や年金に影響)
  • 今の会社でもある程度「優秀だ」と思われている(「自分の評価が低い」ことが不満で転職しても、もともとその人は市場価値が無いのでほぼうまくいかない)
  • 成果報酬や営業職でも対応可能な体力と能力を持ち合わせている

もちろん、この条件を守らなくても成功する人もいます。特に、金銭面をあまり気にせず、やりたいことや可能性を追求する方々は自由に転職すればいいと思います。しかしながら、「様々な前提条件」に縛られている平凡な一般人は、ほぼこの条件でないとうまくいかないと思います。条件を満たさない場合は、残念ですが転職は思いとどまり、不満はあってもダラダラと生活するか、本ブログでおすすめしているとおり今の会社で出世することをお勧めします。

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